カンファレンスレポート「PTSDの治療法について ~持続エクスポージャー療法(Prolonged Exposure Therapy:PE)のご紹介~」
2019年11月13日、第44回 慶應産業精神保健カンファレンスが開かれました。
講 演: PTSDの治療法について ~持続エクスポージャー療法(Prolonged Exposure Therapy:PE)のご紹介~
演 者: 慶應義塾大学ストレス研究センター 澁谷美穂子 臨床心理士
会の前半は、持続エクスポージャー療法の基礎となっている「情動処理理論」と具体的な治療の介入方法が紹介され、後半は実際の患者さんの症例提示が行われました。
情報処理理論では「PTSD が慢性化するのは、トラウマの想起刺激を極度に回避したために、トラウマ記憶が適切な処理を受けなかったことが原因である」としています。そのため、トラウマとなった場面を詳しく語る想像エクスポージャーと、日常の中で避けていた場面に直面してい現実エクスポージャーの両輪で曝露を行い、不適切な形でネガティブに固定化されたトラウマ記憶に関する捉え方のを修正していきます。後半の症例提示ではトラウマ記憶の中で現在もっとも苦痛を感じている部分を抜き出し、「その記憶に繰り返し触れて話す」という診療場面が共有されました。
「曝露により症状が悪化するのではないか、そうさせないためにも条件を付けて想起させ、安全性を担保しているのではないか」といった甘い推測はもろくも崩れ、リアルさをできる限り追求していくような治療介入の迫力に圧倒されました。そして、この治療法の高い効果と低い脱落率は、情動処理理論の正しさを示しているように感じられました。
(二宮朗)