慶應義塾大学ストレス研究センターカンファレンス「医療の質と効率性を高めるための 英国国営医療(NHS)の取り組み」〜開催レポート

2019年4月16日、慶應義塾大学信濃町キャンパス総合医科学研究棟ラウンジにて、ストレス研究センターカンファレンスが開かれました。

『医療の質と効率性を高めるための英国国営医療(NHS)の取り組み』と題し、”Lord Carter review”におけるベンチマーク モデル病院プロジェクトの実際について、イギリスより来日中のMs. Emmi Poteliakhoffにご講演いただきました。

 

 

《Ms. Emmi Poteliakhoffの略歴》

Director of Model Hospital and Analytics, NHS Improvement

ケンブリッジ大学経済学部卒業後、英国保健省入省。2014年、首相官邸(キャメロン政権)で保健福祉担当の上級政策アドバイザーを務める。2015年より英国国営医療(NHS)で、医療の質、効率性の改善のための取り組み、Lord Carter reviewをdirectorとして主導。London School of Economics と Columbia Universityで Masters in Public administration 取得。

 

 

 

 

「Model Hospital」は、病院間のperformanceをベンチマークし、職員であれば誰でも閲覧可能な状態にし、主体的な改善を促す取り組みです。

お話を聞いていて2点ほど印象に残った点がありました。

1. まず踏み出す。
ベンチマークのアウトカムの中には、完全とは言えないアウトカムももちろん含まれるが、まずはそれを公開して、改善を図ろうとしている。

2. 「正しさ」より「使いやすさ」を優先
病院間のパフォーマンスを比較するので、パフォーマンスに影響を及ぼす因子(患者の年齢や重症度など)の調整などが必要ではあるが、あえてそうした因子の調整はあまり行わず、ダイレクトな数値でベンチマークを行う。その背景には、standardizedやadjustedされた数値は、結果の解釈が難しく、統計に明るくない一般の職員の直接的な行動変容に繋がりにくいという考えがあるようです。

こうしてみると、Model Hospitalの取り組みは、「データのためのデータ」ではなく、「行動変容のためのデータ」であることがわかります。

 

「行動変容」の観点から「データ」をどう構築するかという視点は、私自身不十分だった視点でもあり大いに学ぶところがありました。

 

 

(佐渡充洋)