マインドフルネスMindfulness

マインドフルネスとは、「今この瞬間の体験に気づき、ありのままにそれを受け入れる方法」(大谷, 2014)のことです。マインドフルネスの概念を医療に応用し、8週間のプログラムを作ったのは、マサチューセッツ大学のジョン・カバットジン博士で、1970年代のことです。このプログラムはマインドフルネスストレス低減法(Mindfulness Based Stress Reduction: MBSR)と呼ばれています。その後2000年にジョン・ティーズデール博士、マーク・ウィリアムズ博士、ジンデル・シーガル博士らが、MBSRを基にしたマインドフルネス認知療法(Mindfulness Based Cognitive Therapy: MBCT)を開発し、うつ病の再発予防効果を実証してから、マインドフルネスの概念が医療の世界で広く知られるようになってきました。以後、アメリカやヨーロッパを中心に、マインドフルネスの様々な効果が実証されるようになってきています。しかし、文化や社会制度の異なるわが国でも同じような効果が得られるのか、その科学的根拠は、まだ十分に蓄積されているとは言えません。私たちは、研究を通して、マインドフルネスが適切な形で社会に普及していくことに貢献していきたいと考えています。これまでにマインドフルネスに関連して以下の研究が実施されています。詳細はそれぞれをご覧ください。

過去に実施した「マインドフルネス教室」の参加者募集ページはこちらからご覧いただけます。

不安障害に対するマインドフルネスMindfulnes for anxiety disorder

諸外国では、マインドフルネスが不安障害に対して効果があることが確認されていますが、日本においても同様に効果があるかどうかはまだ十分に調べられていませんでした。そこで、我々は、不安障害の患者さんに対するマインドフルネスの効果を検証するために、最初に、対照群をおかない形でパイロット研究を行い、そのあとで、無作為化割付比較対照試験を実施し、マインドフルネスが不安障害に対して効果があることを実証しました。それぞれの研究の概要については以下をご参照ください。

パイロット研究Pilot study

【目的】 この研究は、不安障害(パニック障害、社交不安障害、強迫性障害)に対するマインドフルネス教室の効果を、介入前後の比較で検証することを目的に行われました。

【方法】 パニック障害、社交不安障害、強迫性障害のいずれかの診断基準を満たす対象者13名に対して、毎週2時間全8回のマインドフルネス教室を実施し、実施前後で不安症状やうつ症状などがどのように変化するかの評価を行いました(対照群をおかない単群前後比較)。

【結果】 その結果、不安症状の尺度であるSTAI-stateの平均値は、介入前52.4だった値が、介入後は40.8(40点以下が正常域)と、ほぼ正常域まで、有意に低下することが明らかになりました(p値=0.001)。

結論:マインドフルネス教室が不安症状に対して、改善効果を持つことが示唆されました。だだし、この研究は、「対照群をおかない単群での研究」であるため、最終的な効果の検証のために、「無作為化比較対照試験」を、実施することとしました。

*本研究の成果を第111回日本精神神経学会学術総会(2015年6月大阪)で発表しました。

無作為化比較対照試験Randomized Controlled Trial

【目的】 我々が前年度に実施した、パイロット研究の結果から、マインドフルネス教室が不安症状を有意に改善させる可能性が示さました。その結果を受け、無作為化比較対照試験で対照群と比較した場合のマインドフルネス教室の効果を検証する目的で、本研究が実施されました。

【方法】 パニック障害、社交不安障害のいずれかの診断基準を満たす対象者40名を介入群と対照(待機)群とに無作為に割り付け、介入群に対しては、通常治療に加えて毎週2時間全8回のマインドフルネス教室を、対照群に対しては通常治療のみを実施しました。また実施前後で両群に対して、不安症状やうつ症状などの評価を行いました。

【結果】 主要評価項目とした不安症状の評価尺度であるSTAI-stateの介入後(8週間後)の値は、介入群38.0、対照群 49.8であり(40点以下が正常域)、介入群は対照群に比べて有意な改善が認められました(p=0.002)。また特性不安の尺度であるSTAI-trait、マインドフルネスの尺度であるFFMQなどについても有意な改善を認めました。

【結論】 マインドフルネス教室がパニック障害、社交不安障害に対して、その不安症状の軽減に有効であることが示されました。また、STAI-traitの値も有意に改善したことから、マインドフルネス教室の効果が、長期的に維持される可能性も示唆されました。

*本研究の成果を第112回日本精神神経学会学術総会(2016年6月千葉)で発表し、筆頭演者の二宮朗医師が優秀発表賞を受賞しました。
また、英語論文がPsychiatry and Clinical Neurosciences誌にアクセプトされました。 こちらよりご覧いただけます。

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Well beingに対するマインドフルネスMindfulness for well being

マインドフルネスがwell-beingやストレスに与える影響に関する研究Mindfulness for well-being

マインドフルネスが、うつ病の再発予防や不安症状などに対して一定の効果があることはこれまでの研究から明らかになってきています。一方、世界的には、一般の人たちに対して、幸福感や人生の充実感といったwell-beingやストレスについても改善をもたらすことが徐々に確認されはじめていますが、日本ではまだその有効性が確認されていません。現在、私たちの研究グループでは、マインドフルネスがwell-beingやストレス改善に効果があるかを検討するため、研究を実施しています。

昨年実施されたパイロット研究(試験的な研究)では、以下のような結果が示され、マインドフルネスがwell-beingを改善させる効果がある可能性が示唆されました。

パイロット研究Pilot study

【目的】
この研究は、一般の方々と、精神疾患をお持ちの方々(不安障害、適応障害、うつ病)の混合グループに対して、マインドフルネス教室がwell-beingやストレス改善に及ぼす効果を、介入前後の比較で検証することを目的に行われました。

【方法】
過去に精神疾患の既往がない一般の対象者12名と、不安障害、適応障害、うつ病のいずれかの診断基準を満たす対象者12名、合計24名に対して、毎週2時間計8回のマインドフルネス教室を実施した後、月1回2時間計6回のフォローアップ教室を実施しました。つまり、研究期間は8か月となります。その上で、介入前後でwell-beingやストレスなどがどのように変化するかの評価を行いました(対照群をおかない単群前後比較)。

【結果】
<全体の結果>開始8週後の時点でwell-beingの尺度であるSWLSとマインドフルネスの尺度であるFFMQが統計学的に有意な改善を認めました。その結果は開始8か月後の最終フォローアップでも改善効果が持続していることがわかりました。

<一般対象者のグループ>開始8週後のFFMQと開始5か月後のSWLSで有意な改善をみられました。

<精神疾患を持つグループ>開始8か月後においてSWLS、FFMQの有意な改善を認めました。

【結論】
マインドフルネス教室が一般の対象者や精神疾患を持つ対象者の混合グループに対して、well-beingの改善効果を持つことが示唆されました。だだし、この研究は、「対照群をおかない単群での研究」であるため、最終的な効果の検証のために、「無作為化比較対照試験」を計画することにしました。

*本研究の成果を第113回日本精神神経学会学術総会(2017年6月名古屋)、日本マインドフルネス学会第3回大会(2016年11月東京)で発表しました。